草舟のうたとギター《森と光編》/ホリー・ガーデン

 

 

 新小平の《塔》とわたしがひとり決めしてお呼びしている場所の、正式な名称は「ホリー・ガーデン」です。植物の本屋さんである草舟あんとす号さん、二羽の小鳥の水盤が入り口でお迎えしてくださるコトリ花店さん、いついただいてもおいしいクッキーとトライフルをおつくりになるお菓子のコナフェさんからなる、みっつのお店を総称して「ホリー・ガーデン」――これはみっつのお店のまえにあるお庭のことをさしてそういいあらわすのだそうです。このお庭、妖精が棲んでいるのだそうですよ。嘘だとお思いになるならば、そっとお庭のなかを歩いてみてください。その気配の名残をきっと感じられることと思います。「妖精の椅子」を見つけたならば、そのときにはもう、あなたもホリー・ガーデンの《魔法》にかけられていることでしょう。

 

 さて、わたしがこのたびお話したかったのは、菫の花が咲きはじめた季節、冬と春の、それはすなわち世界が死と生のあわいに漂っていたころ、草舟あんとす号さんという「舟」を舞台に歌を奏でてくださった吟遊詩人のことです。このかたのお名前を相澤歩さんとおっしゃいます。相澤さんのライヴをあんとすさんのTwitterの告知で知り、その歌声を聴いてから、わたしはとてもその「吟遊詩人」のお歌をじかにこの耳で聴いてみたく思い、矢も楯もたまらずご予約をいれたことを覚えています。

 

 そしてその直感がただしかったことを、あのきよらかな白い部屋で歌声に耳を傾けながら、わたしは感じていました。

 

 

 

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 切ない祈りにも似た声で紡がれる懐かしい安らぎの歌。ステンドグラスと花と光、虹のふる白い部屋。聖なる場所。とくに「わたしたちにゆるされるのは祈ることだけ」だという『薔薇窓』という曲の痛切さがたまらなくいとおしく感じました。

 

 

 薔薇窓のある町で

 ひとはうなだれ生きてゆく

 薔薇窓 夕日砕く 祈ることだけゆるされる

 

 出会い失い嘘をついて

 いたたまれないまま橋を渡る

 薔薇窓のある教会の

 鐘の音 川にこぼれてく

 

 薔薇窓のある町で

 ひとはうなだれ生きてゆく

 薔薇窓 夕日砕く 祈ることだけゆるされる

 

 夢は絶え愛は枯れ歩き疲れ

 部屋に自分で灯りつける

 でもそれはいずれにせよ

 薔薇窓のある町の暮らし

 

 薔薇窓のある町で

 ひとはそれでも生きてゆく

 薔薇窓 朝日に咲く

 ひとは新たに生きてゆく

 祈ることだけ許されて

 

 ayumu aizawa『薔薇窓』

 

 

  こうして文章だけで目で触れると、悲痛な歌のように感じるかもしれませんが、これが相澤さんの歌声という耳からの情景を感じると、とても慈愛に満ちた曲なのです。目と耳と心に刺さったところから、その棘がやさしくわたしを浄化してくれるようなあたたかな光に満ちていて、その歌を感じた瞬間、わたしのなかのなにかが「目覚める」ような痛みと癒しの曲でした。  この『薔薇窓』にかぎらず、すべてがそのような「浄化」の作用を声と歌によっておよぼしてくれる、相澤歩さんはそのようなかたであると、わたしは感じます。しかし「『薔薇窓』の入ったCDはどちらですか?」とお聞きし、それをお迎えしてしまうくらいに、わたしにとってこの曲は意味のあるものでした。

 

 当日のライブ映像とともに、『薔薇窓』がこちらから視聴できます。ぜひ吟遊詩人の歌に耳を傾けてみてください。 

 

www.youtube.com

 

 

 

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 白いお部屋には「光」に捧げる弔花のようにTakeda Hiromさんの菫のpopup作品が飾られてありました。

 

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 ライブの帰りにいただいたおみやげです。銀の匙のうえの白い菫はいまもわたしの部屋で芳しいにおいを放って美しく微笑んでいます。すみれの花の砂糖漬けは毎日ひと粒ずつ紅茶に浮かべていただきました。吟遊詩人でありながら文筆家でもある相澤さんのご本もお迎えしたのですが、書物のお写真や言葉はもとより、ラッピングの♡の葉っぱがとても素敵で、これもお部屋に飾ってあります。

 

 こちらのライブは「すみれ」を主題とされていて、おみやげのすみれの砂糖漬けはコナフェさんが、銀の匙はコトリ花店さんがご用意してくれたものです。美しい心遣いに感謝申しあげます。わたしが参加したのは昼の部である《森と光編》だったのですが、夜の部の《森と灯り編》はどのようなものだったのでしょうか。きっと素晴らしい吟遊の宴だったことと思います。ホリー・ガーデンと吟遊詩人が魅せてくれた魔法はいまもわたしの心のなかにありますし、実はあれから毎晩夜眠るまえには相澤さんの音楽を聴き、それによって一日に想いを馳せることが安眠のための儀式のごときものになっております。

 

 

 最後に、草舟あんとす号さんについて。

 

 「ちいさな庭」であるからこそ、うつくしい花やあたたかな光に気づくことがあります。ふりそそぐ木洩れ日や虹に微笑むための「ちいささ」というのは、その空間を清潔にたもつための器。草舟あんとす号さんはそのような本屋さんだと思います。これはわたしがこれまでお迎えさせていただいた書物の一部です。わたしはあんとすさんの選書センスが大好きで、訪うとかなりの確率でご本をお迎えしてしまいます。これもあの清らかな庭の魔法なのかもしれません。

 

 

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