アール・デコ・シリーズ企画展 II /霧とリボン

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 このたび吉祥寺の菫色の小部屋こと霧とリボンさまのコラボレーション・レーベル設立の意味もこめられた記念すべき企画展の初日に、おともだちと駆けつけました。

 

 その名も《Modern Mauve Flapper/モダン・モーヴ・フラッパー》——略してMMFと菫色の淑女たちは秘密結社的に呼びならわし、そのくちびるを扇の内側に隠すようにしてくすくすと微笑みあうのです。それがあなたとわたし、わたしとあなたを結ぶあたらしい暗号のひとつになることを願って。

 

 

 Modern——聡明に
 Mauve——繊細に
 Flapper——自由に

 三つの単語に込めた想い——自身の感性に誠実に生きるための、ささやかなきっかけとなる作品をお届けしたいと思っております。

 

 

 

 レーベル設立にむける言葉として、このようなことが霧とリボンさまのホームページに記されてありました。聡明、繊細、自由、と胸をときめかせて霧のむこうのお部屋に足を踏み入れたとき、わたしはゆるされるならば歓声をあげたいほどでした。いつにもましてその小部屋がモーヴ色の輝きに満ちているように感じられて。

 

 「ヴァージニア」「ヴィタ」「M」とそれぞれに名づけられたお帽子とお洋服に隠された物語の秘密のにおい。

 

 ヴァージニアはいわずと知れたあのウルフを、ヴィタは彼女の恋人でもあり、作品『オーランドー』のモデルにもなったヴィタ・サックヴィル=ウェストのことだとして、それならば「M」とは誰か? とわたしは考えていました。意味深長に頭文字だけの女。物語と秘密のにおい。そのなかからなにかを嗅ぎとったように、もしかしたらと頭にひらめくものがおりてきて、その紫色の閃光のなか思ったのです。

 

 ——モーヴのMではないかしら。

 

 実在しながら架空である女性たちの物語と秘密がこめられたお名前に、霧とリボンという小部屋の静謐なモーヴを象徴する意味での「M」がいて、三人で菫色の海を泳ぎながら戯れ、瀟洒な会話をかわし、言葉遊びをしている。そんな光景が浮かんでくるようでした。

 

 その菫色した妄想の綿飴を大変気に入り、だからわたしは勝手に「M」をモーヴのMとひとり決めしているのですが、実際のところはわかりません。けれども「M」という暗号の、なんと魅力的なことでしょう。わたしの脳裏からしばらく離れることのなかったその頭文字からはじまる、親愛なる魅力的な女性たちのことを考えつつ、存在そのものが芸術品である小部屋のなかをつくづくと見まわしているうちに、何時間も過ぎてゆきました。

 

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 どこに視線をめぐらせてもあらゆるものが菫色の魔法にかかり、それがけっして解けることのない贅沢で潤沢な時間を過ごしながら、あのマカロンみたいなお帽子、くるみボタンのワンピース、などとくすくす笑いあって愛らしい女の子の等身大着せ替え人形を拝見したわたしは果報者というほかありません。彼女のお迎えしたドレスの名は、やっぱり「M」——わたしたち、その頭文字に魅入られてしまったのかもしれないね。裏地にしっかりと縫われた菫が彼女の美しい秘密のひとつとなることを、わたしは確信している次第です。

 

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  ファッション・プレート集と須川まきこさんのご本をお迎えいたしました。野薔薇色のリボンで閉じられた美しきプレート集の繊細な封印を解くのがしのびなくて、しばらくは飾っておきたく思いますが、このプレート集には「ヴァージニア」「ヴィタ」「M」の物語が玉田優花子さまの手によって紡がれています。はやく読みたい。でも、読みたくない。菫色の魔法のなかで、ずっと揺蕩っていたいから。MMFの「1」の刻印が記されたカードをいただけた光栄の至福とともに。

 

 霧とリボンさんをこよなく愛するわたしですが、ずっと自分がこの場所にいてもいいのだろうかと、それはあの菫色の小部屋に対するちいさな冒涜ではないかと漠然と感じてもいました。けれども今回はじめて心が解放されたみたいに、ここにいてもいいのだと思えたこと、そのことがとても自分自身に対して嬉しかった。ふさわしくないのならふさわしいわたしになればいいのだと、そう感じられたことが。

 

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 霧とリボンさまで来年二月からヴァニラ画廊さまで開催される安蘭さんのご案内もいただきました。こちらもとても楽しみにしております。

 

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