永遠の少女標本(16)――サロメ

 

 

 サロメ(Salomé)

 

 ヘロディアの娘として数々の芸術作品のモティーフになった王女、あるいはオスカー・ワイルド著『サロメ』の登場人物。

 


 空を欲しがった少女。


 この少女の青白い頬は銀の花の色、白い蝶が舞う雪の色。

 彼女の瞼の裏に棲む月が、彼女に天を夢見させる。

 だから預言者のなかに翼を見たとき、空に焦がれるように男に焦がれた。

 花は散り、蝶は死骸となった。月は穢された。

 

 しかしその翼で空を飛びたい男は、月の重力をふりきって、厖大な質量をもつ女の肉体に捕らえられることなく、その引力から逃れた。銀河系の彼方にまで飛翔せずにはいられない男の精神を目の当たりにして、彼女はますますその男を手に入れたくなった。空を欲しがる子どものように。

 

 だが男の精神が飛翔している場所に、彼女はともにできないのだ跳躍することはできないのだ。そのことをはっきりと悟ったとき、天を夢見たように、恋した男の死を夢見るようになる。

 

 あのひとの首が欲しい。

 

 心という翼から切り離されたそれを胸に抱いたとき、男は永遠に彼女のものになる。彼女だけのものに。その首は絢爛で典雅で空虚な神殿に祀られている。サロメという巫女のもとで。