永遠の少女標本(15)――姫宮アンシー

 

 姫宮アンシー(ひめみや・あんしい)

 

 アニメ作品『少女革命ウテナ』の登場人物。


 薔薇の少女。


 薔薇はその心に幾重にも衣裳を纏っている。迷宮に渦巻く螺旋階段のような花。魅いる者に秘密を囁く花。どこまでいっても出口のない複雑さに、彼女に惑ったものは狂う。

 

 そう、彼女は誰にもその「心」を見せることはない。

 

 彼女のなかのラビリンスの中心にはミノタウロスのような怪物がいるのかもしれない、あるいはからっぽな空洞の虚無がひろがっているのかもしれない。だから彼女は自分を求める者の「花嫁」になれる。そこに自らの意志は介在しない。

 

 薔薇はただ、美しくあること、という自らの役割に忠実なままに、咲き誇るだけ。

 

 けれども忘れてはいけない。その花には鋭い棘があるのだということを。その棘がときに、ひとりの人間を死へとみちびくこともあるかもしれないのだということを。そしてその「棘」は彼女自身を刺し、彼女の内部に猛毒をめぐらせていた。微笑みながら、彼女はその瞳に唇に「死」を浮かべてみせるのだ。

 

 彼女のなかの空洞、あるいは怪物。

 それを「革命」してくれた、気高いプリンスの心をもつ者。

 

 おとぎ話なんて信じることを諦めた彼女のまえに出現したその者によって、彼女はおのれの「毒」から解放された。

 

 花は萼によって救われた。そしてそのために、萼は彼女のまえから姿を消した。もうひとりでも咲けるでしょう? そう囁くように。だからつぎは、わたしが萼を探し、見つけなければ。たったひとりのひと、わたしの「ウテナ」を。