永遠の少女標本(13)――キャサリン・アーンショー

 

 

 キャサリン・アーンショー(Catherine Earnshaw)

 

 エミリー・ブロンテ著『嵐が丘』の登場人物。


 荒地という宇宙を彷徨う少女。


 「かれはわたしで、わたしはかれなのよ」と彼女はいった。

 

 彼女とかれはそれぞれ異なるふたりの人間でありながら、ひとつの心臓を共有していた。そう、魂を。

 

 それは夜空に瞬くゆいいつの星。

 

 企てた悪戯に成功してふたりでおおはしゃぎして笑うとき、ヒースの荒地に寝そべりながら雄弁な沈黙のなかで微笑みあうとき、彼女たちはふたりだけの宇宙のなかにいた。四つの眼が見つめあうとき、「時間」というものはふたりのなかから消滅した。


 かれは彼女のものだった。あの荒地とおなじなまえをもつ、あの男は。

 それはこの世界のはじまりから定められた意志だったのだから。

 

 ふたりは生まれたときにふたつの恒星として結ばれ、出逢ったときにひとつに融けあった。そう、魂が。

 

 愛? 運命? 共犯者?

 

 言葉というかたちあるもので、わたしたちの関係をさだめてほしくないわ。

 

 わたしたちはひとつの心臓をもった、ふたつの星なの。追いかけっこをしてるのよ。かれがわたしを追い、わたしがかれを追うの。

 

 結婚? 家庭? 生活?

 

 だからわたしたちの関係を、言葉でさだめないでといっているでしょう。

 あのひとの心はけっして、そんな器のなかに閉じこめられない。わたし、かれの奥さまになるつもりはないわ。

 

 あの宇宙は、あの輝きのままで。

 そこに「永遠」があるのよ。それなのに。

 

 どうしてわたしのこの「心」をわかってくれないの? わたしたちはひとつのものなのに。どうしてわたしのまえから消えてしまったの?

 

 あなたがいなければ、わたしの宇宙も死んでしまう。あのおおきくてまぶしくて、熱病のときに見る悪い夢のような、あなたという存在。

 

 わたしはわたしの夢を取り戻すの。わたしの宇宙を。だから「死」があなたを捕らえる生きた罠になるわ。あなたはわたしから、けっして離れることはできないのよ。


 ねえ、ヒースクリフ。わたしのあなた。