永遠の少女標本(12)――デア・ライト

 

 デア・ライト(Dare Wright、1914年12月3日―2001年1月25日)


 カナダで生まれ、アメリカ合衆国で育つ。モデルを経たのち、人形の写真絵本で有名になる。


 さびしい少女。

 


 “あるところに、小さなお人形がいました。なまえは、エディス。かのじょは、すてきなおうちにすみ、なんでももっていましたが、一つだけ、ほしいものがありました。それは、いっしょにあそぶともだち。”

 

 

 彼女の絵本、『The Lonely Doll(小さなお人形の物語)』はそんなふうにしてはじまる。

 

 おともだちって、どんなものかしら?

 

 きっとわたしのことを好きになってくれて、わたしも大好きになれる、そんな相手。わたしはひとりぼっちだけれど、いつか出逢うあなたのことを想えば、さびしくないわ。

 

 そう、そしてあなたに出逢った。わたしにそっくりなお人形。あなたにエディスという名前を捧げるわ。エディスって、わたしのママの名前よ。あなたのことが大好きだから、わたしのだいすきなひとの名前を、あなたにあげる。だからわたしのおともだちになってくれる?

 

 昼はおひさまの光を浴びて、砂浜のうえにいっしょに寝転びましょう。海の果ての空との境を見つめながら、そこに飛びたった鳥たちが、どこにいってしまったのか、考えましょう。

 

 夜はおつきさまの囁きに、ともに耳を澄ませましょう。手をにぎりあった指先から、あなたの体温がつたわってくる。わたしはひとりじゃないのよと自分自身に確認することの幸せ。

 

 エディスはお人形なんかじゃないわ。わたしの半身、双児の片割れ、そしていちばん大切なおともだち。


 彼女の幼少時代に両親は離婚し、一家はばらばらとなって、父と兄は彼女のもとから去っていった。

 

 「でもさびしくないわ」と彼女は母親とおなじ名前の人形に語りかける。「わたしにはあなたがいるもの。ママもさびしくないわよね。わたしがいるもの。ねえ、ママ? どうして返事をしてくれないの?」

 

 さびしくない、淋しくない、寂しくない。それがわたしの呪文。

 

 懲役期間のような子ども時代を終え、大人になった彼女は、生き別れていた兄と再会した。兄は彼女と「エディス」が“さびしく”ないように二匹の熊のぬいぐるみをプレゼントした。

 

 彼女の「おともだち」のエディスと、その熊たちを主人公として出来あがった絵本が、『小さなお人形の物語』だ。

 

 そこには彼女の「念」がこめられている。

 ひとりにしないで。おいてかないで。いいこになるから。

 

 わたし、ほんとうはさびしかった。とても淋しかった。寂しかったのよ。そんな想いであふれている。彼女自身の生涯を知ったのちに、あの絵本を読むと、あとからあとからこぼれる涙をとめることができない。

 

 

小さなお人形の物語 (単行本)

小さなお人形の物語 (単行本)