永遠の少女標本(11)――セシル

 


 セシル (フランソワーズ・サガン著『悲しみよ こんにちは』の登場人物)

 

 夏に閉じこめられた少女。

 

 彼女は夏そのものだ。

 

 輝く光の粒子が人間たちの皮膚を灼き、その陽射しの注がれるところからなにかが音をたてて腐敗してゆく。夏が呼吸するとき、そこには死のにおいが充満している。この「死」から逃れようとする者を見のがしはしないというように、中天に吊るされた白く熟した太陽が監視している。

 

 彼女の悪戯も意地悪も、世界に対する復讐も、太陽はすべて見ていた。

 

 彼女がはじめた残酷な遊戯は一歩ずつ「死」の様相を呈し、そのさきに訪れる崩壊によって夏の廃墟のなかに幽閉され、おわりの海辺に吹くのに似た乾いた風が吹きわたる瓦礫だらけの出口のない迷宮のなかで、彼女は砂浜に白い骨のごとき墓標を残して波が逃げるように退却してゆくさまに目を凝らすことしかできない。夏の蜃気楼のなかから不意に出現したグロテスクな現実を見つめるように。

 

 紺碧の海はきらめく陽光を浴びながら無情な口を大きく開ける。それが閉ざされるとき、夏は季節が差しだす生贄とともに去ってゆく。そしてもう二度と戻ってはこない。