永遠の少女標本(10)――ジュリエット・キャピュレット

 


 ジュリエット・キャピュレット(Juliet Capulet)

 

 ウィリアム・シェイクスピアロミオとジュリエット』の登場人物。


 流星の少女。

 


 あのひとに出逢ったとき、わたしは十四歳でした。

 

 ある種の分別によれば、それは恋をするにはやすぎる年齢でした。しかし早いとか遅いとか、問題はそんなところにはありません。

 

 分別とは、理性の子どもです。そして恋とは、理性を超えたところにあるのですから。そう、乱暴にいってしまえば、恋とは狂気なのです。

 

 出会いがしらに「神さま」にぶつかるようにして、わたしはあのひとと出逢ってしまいました。

 

 目と目があったそのときに、わたしの無垢な瞳に火が灯りました。この華奢な肢体は炎のような情熱に燃えあがりました。

 

 わたしたちは巡りあい、互いの存在を認めあった瞬間に恋へとおち、そして翌日には婚姻を結び、五日後にはともに死んだ。

 

 わたしたちは落ちて、墜ちて、堕ちていった。

 

 運命という名の歯車のもとに。とんでもない勢いで、ものすごい速さで、それが回転し軋んでゆくが、わたしには聴こえていました。しかしどうすることもできなかった。わたしもあのひとも、歯車の部品。それが止まるまで、あるいは壊れるまで、まわりつづけることしかできない。

 

 回る、周る、廻る、わたしたちの恋。

 わたしの心が燃えてゆく。焼けてゆく。

 

 わたしの狂気が凶器となって、あなたは毒のまえに斃れた。

 

 どうしてわたしにその毒を、一滴でも残してはくださらなかったの?

 あなたとおなじ毒で、わたしも死にたかったのに。

 

 わたしから流れてゆく血、炎とおなじ色をしたその血は、恋の色でした。

 流星のように死ぬために燃えてゆく、恋の色でした。