錬金術〜誘惑の作用/スパンアートギャラリー

 

 松島智里さんのコラージュ個展、『錬金術〜誘惑の作用』を拝見しにスパンアートギャラリーへとお邪魔いたしました。

 

 けれども彼女の作品の優美さを言葉でいいあらわすなどとは不遜なことだ。それはただ耳を傾けた者が心で感じていればよい音楽を、その旋律がのこる余韻のさなか音符の解説をはじめるような無粋さだと思う。彼女のコラージュは、それを見た者がそれぞれ心で感じればそれでよい。

 

 だから、というわけでもないけれど、わたしはわたしの目に映したものの意味を紐解くためにこの展覧会について記述しておきたいと思う。不遜で無粋なことだけれど、ゆるしてほしい。

 

 松島智里さんのコラージュは燃える流星や七彩の虹に似ていると、わたしは思う。もしかしたら凶星かもしれず、凶兆かもしれないものに。

 

 すべての美しいものにはラベルを貼るように名前がつけられ、その謎は解明され抹殺されてしまう。だから人間たちは夢を失ってしまったと、誰かがそんなことを嘆いている。森に妖精はいないし、海から人魚はきえた。月に天女はいないし、雪は天使のなみだなどではなかった。

 

 病んだ薔薇は人に死をあたえる甘い棘をもたなくなって久しく、虹に感じた不吉な予兆はあの空の彼方に消え、星がひとつの滅びの予言のもとに運命が墜ちる日を、誰も信じなくなった。世界から錬金術という魔法は去っていった。すべてが隈なく明示される光に照らされて、息苦しさのあまり人間たちは夢を見なくなった。

 

 けれども美しいものは消えてなどいないのだ。わたしたちの目がそれを、映さなくなっただけ。かつての夢はいつだってわたしたちのなかで微睡みながら、ふたたび目覚める瞬間を待っている。松島さんの作品は、美しいもののもつ力をわたしに信じさせてくれる。残酷におしひろげられた蕾からひらいた極彩色の獄のなかに彷徨いこんでしまうような眩暈が、彼女のコラージュをこの双眸に映すたびに押し寄せてくるのだ。彼女の作品のいたるところに散りばめられた青い蝶の翅のかけらを目印に、わたしは自らすすんで未知の物語に迷いこむ。彼女の紡ぎだしたおとぎ話によって、わたしのなかのなにかが眠りから覚めるのを待つ。わたしの心にちいさな虹が架かる。それはわたしを「あちら側」につれていってくれる橋であり、そのさきには魅惑的な星々の宇宙が待っていてくれる。

 

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 カフェCLOUD9のオーナーでもある松島さんのコラージュ缶におさめられたオリジナルブレンドも無事に入手。麗しさのあまり封をあけられないので、しばらくこのまま飾っておきます。

 

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 いただいたお名刺の裏側に美しきアリス。この作品にひと目惚れしたのが彼女のコラージュに恋をしたきっかけなのでほんとうに嬉しかったし、念願叶ってようやくお逢いできた松島さんは、とてもやさしく話しかけてくださって天にも昇る思いでした。

 

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