永遠の少女標本(7)――八百屋お七

 

 

 八百屋お七 (やおや・おしち)

 

 江戸本郷の八百屋の娘。恋のために火刑に処されたとされる少女。文学、歌舞伎、文楽など多くの芸術のなかでとりあげられている。


 曼珠沙華の少女。

 


 火の海から救出されたときに出逢った男に恋をし、もう一度おなじように世界を炎で燃やせば、その男と再会できると信じて、その罪で火刑に滅びた彼女。

 その火とは、彼女の恋心のことだった。燻って発火した焔は、たやすく消えない。むしろ、それを消したいと思うほどに恋は赤く青く燃えてしまう。

 

 彼女の火は、曼珠沙華の花の姿をしていた。

 

 それは彼女を地獄へと誘う彼岸の花だ。

 

 花のなかに潜む毒が彼女を蝕み、彼女は火に魅入られた。すなわち恋に。

 地獄のなかの恋こそが尊い。そこにいるのはうつつに生きる男ではなく、彼女の心に棲む男。最愛のひとは、自分自身のなかにいる。そのひとを一心に想うあまり、彼女は狂った。

 

 狂気の炎は、すべてを燃やす凶器の焔として、彼女を焦がした。

 

 曼珠沙華花言葉は、「想うひとはただひとり」。

 

 ただひとりの男に心を捧げ、あの「滅びの血」の花のごとく、燃えさかる死へとみちびかれた彼女。

 おのれを包むほのおのなかで微笑みながら、彼女は曼珠沙華のもうひとつの花言葉を口にしたのだろうか。

 

 

 「また逢う日を楽しみに」