永遠の少女標本(6)――キャロライン・ブラックウッド

 

 

 キャロライン・ブラックウッド(Caroline Blackwood, 1931年7月1日-1996年2月14日)

 

 英国の作家。


 想像し創造した少女。

 


 貴族の娘として生まれた彼女は、その高潔な血から花ひらき、やがては女王のように咲き誇る高貴な美貌を生まれながらにそなえていた。

 

 「神」というものが存在するのなら、これこそ彼のひとのおつくりになった、精妙な芸術品。彼女がこの世に生きていることが信じがたい。彼女はほんとうに人間だのだろうか。妖精ではないのだろうか。

 

 男たちは想像したに違いない。

 

 彼女のあのすきとおる皮膚からは透明な蝶の翅が飛びたち魅了の鱗粉をまいているのだと。彼女が手首に切り口を入れれば青い薔薇が生まれるのだと。彼女のくちづけからはまるで鏡にキスしたみたいにガラスの味がするのだと。

 

 想像され創造され、彼女は美神となった。

 

 しかしそんな偶像は唾を吐きかけてやりたいほどに腹立たしいものだ。

 

 わたしはわたしよ。このわたしではない《わたし》を勝手に押しつけないで。

 

 彼女は神につくられた「作品」でありたかったのではなく、「神」そのものになりたかった。自分自身とは異なる女をおのれのなかに見た男を愛し、しかし想像されることを拒み、創造されたときに逃げだす。


 わたしは男たちの想像のために生きているのではない。
 わたしはわたし自身の創造のために、生きているのよ。


 そして彼女は「神」になった。作家になった。

 美しい包装紙の中身は空洞であることを期待された少女。そんなの嫌よ、と彼女は自らの「箱」のなかを言葉で表現してみせたのだ。


 男たちの想像と創造を拒んでも、自らの想像と創造からは、けっして逃げたくなかったのだと、そう宣言するように。