永遠の少女標本(4)――レメディス・バロ

 

 

 レメディオス・バロ(Remedios Varo、1908年12月16日-1963年10月8日)

 スペイン出身の画家。メキシコにて死す。


 この世界から脱出をはかろうとした少女。

 


 自分を縛る何者かを、つねにおそれていた彼女。

 その「何者か」とは、時間であり空間であり他者であり神であり、究極的には自分自身のことをさしていたのかもしれない。

 のがれ、逃れ、遁れたい。この世界の異邦人。理からの追放者。


 吸血鬼になりたいわ。「昼」といういとなみの外へ。

 野菜や果実だけたべたいの。「霊魂」がきよらかなまま、この肉体から脱出できるように。

 

 空想に生きても誰にも咎められない「楽園」へと亡命します。この世界の裏側へ。

 

 いったい、このわたしとは「何者」なのでしょうか。人間、女、芸術家。名前なんて、つけるべきじゃない。名づけてしまったら、わたしは《わたし》から、永遠に逃れられないでしょうから。

 


 彼女の絵画作品に共通する「内部」。

 

 女は塔に、月は籠に閉じこめられている。蜂の巣みたいな家から出ていこうとしている少女たちは逃亡できないように鳥たちに監視され、螺旋の城塞都市の迷宮は街を閉ざす。彼女の描くものたちは、つねになにかに幽閉されている。

 

 その「なにか」を世界といってもいいし、子宮といってもいい。

 

 彼女はおそらく、この世に自分という存在を排出した「何者か」に対する復讐を、芸術として昇華したひとだ。