乙女の散策/SERAPHIM

 

 ある晴れた日の午後、親愛なる薔薇の乙女と「乙女の散策」に出かけました。

 

 目的地は国立。猫迷宮展、SERAPHIM、そしてこの世のものとは思えないほどに美味なるクレープとお紅茶をだしてくれるとあるカフェに訪うことを遠足のように予定表にして街をめぐる楽しいお散歩。

 

 今回はSERAPHIMさんのことをつれづれと綴りたいと思います。

 

 

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 SERAPHIMという場所は、そこにこのお店があるとわかっていなければ、うっかりとおりすぎてしまうところに存在します。その暗号という地図を知っている者だけが訪れることをゆるされる隠れ家のような秘密基地のような、そんなひそやかにささやかに胸のなかにしまっておきたい気持ちになる、その扉が見える者のまえにしかドアを開けたさきの空間が出現しないのではないかと感じられる魔法がかかったお店。

 

 まるで大多数ではなく絶対数存在する絶滅危惧種のように思われながらけっして絶滅することのない少女や乙女(とひとことで片づけるにはあまりにも困難な)という、たとえば大正ロマネスクの時代に『みだれ髪』を愛読し舶来品に心をときめかせていた女学生たちの末裔として現代に生き、ある種の潮流と伝統を守ってきた種族によってしか発見することのできないお店なのではないかと、そんな幻想すら抱いてしまうところなのです。

 

 その「地図」はとぎれることのない囁きが繰り広げられるお茶会や手書きのお手紙のなかで、「このひとにならあの場所をお教えしたい」という意志のもとでこっそり耳打ちして隠された手のなかで渡される鍵みたいに、秘密結社風にすこしずつ、けれどもたしかにつたわってゆくような、そんなふうにあの場所の存在は知られているのではないかしら、とわたしは思うのです。

 

 大切な書物の題名を教えるみたいに。

 

 きっと誰もがあの扉をノックするとき、その「書物」に描かれる物語の舞台に迷いこんだ登場人物のひとりになってしまったかのごとき錯覚を感じるのではないかと思うし、そういう夢をみることをやさしくゆるしてくれるところ。それがSERAPHIMというお店だと、少女や乙女たちの祈りにみちたあの空間をはじめて皮膚で感じたときに、そんなふうに思った。

 

 「物語」のなかで乙女であることをゆるされたわたしは、あの空間に流れる優雅な時間に溺れていた。ご店主さんが淹れてくださったロゼ色のお紅茶がとてもうつくしくおいしく、ずっと憧れていたLhiannan:Sheeさんの泡占いのバングルとともにお迎えいたしました。

 

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 この「泡占い」のバングルは、ある村につたわる子供にしか使えない特別な石鹸をイメージしたアクセサリィとのことで、石鹸の泡のなかにその日に見るであろう夢を予兆し映しだすのだと、そんな「物語」が封じこめられているのだそうです。

 

 

 「bubbles forecast(泡占い)」


 この村では子供しか使えない特別な石鹸があります。

 その石鹸を、たっぷりと泡立てると、まぁ不思議。

 今夜訪れたり、目にするであろう景色が泡の中へ次々現れて

 その日の夢を予兆すると言われています。

 

 この美しい説明と恍惚のため息をこぼしてしまうほどに麗しいバングルに、わたしの心臓が撃ち抜かれてから、ずいぶんと時間が経ちます。以前に訪ったとき、とても悩みながら名残り惜しくも諦めたこの装飾品を、ついに決意してお迎えするにいたりました。

 

 わたしがお迎えしたのは泡のなかに薔薇が閉じこめられたような紅色。

 いつものわたしならば、あまり手にとらないようなこのお色に惹きつけられたのは、あるいはそのときご一緒したのが薔薇の乙女だったからなのかもしれません。

 

 わたしの愛する少女や乙女にだけそっとお教えしたい場所。

 それがSERAPHIMというお店。