永遠の少女標本(1)――赫映姫

 

 

  赫映姫(かぐやひめ

 

 『竹取物語』の登場人物。月人。

 


 すべてを拒む少女。

 


 世界も時間も男も、彼女にとっては自分という存在のあえかを葬る者でしかなかった。

 

 彼らの手によって「死」を迎え、少女という一瞬が亡骸となり幻と消えるそのときを、世界であり時間であり男である「他者」たちは待ちかまえている。

 

 そうであったからこそ、彼女はおのれのなかに広がる宇宙空間の夢に逃げるしかなかった。

 

 彼女の「月」は、完全な球形だ。

 

 自分自身という円だけで充足し、欠けるもののない存在であった彼女は、男という「かけら」を必要としていなかった。満月とは拒絶のかたち。どこにも窪みをもたず、その場所にのばした手は、むなしく宙に彷徨うだけ。

 

 彼女はまあるい月のそのなかで美しく微睡み、この地球という夢をみていた。

 

 おのれ以外の何者の手によってもその「夢」を殺められることを拒絶し、かぐやは自らの宇宙に輝く月へと還っていった。

 

 現実の指先が夢を侵すそのまえに、月という「死」を彼女は選んだ。

 

 すべてを拒み、少女のままで。