芸術

霧とリボン——《ミス・モーヴ、リアーヌ・ド・プージィに会いに行く》

女として生まれた者(それは現実の性別というものを超越した《女》です)はみな、目には見えない自分だけの扇をもっているのではないかと、わたしは密かに思っている。その「扇」で口もとを隠すように心を守る。その「扇」だけがわたしのシークレットを知り…

安蘭個展 「Sanctum」/ヴァニラ画廊

羽ばたく蝶を見つめているひとの頭にはおおきなリボンがありました。 月が見おろす場所からなにかを祈るひとの瞳にはお星さまが浮かんでいました。 わたしは蝶とリボンが、少女という生き物を語るうえで欠けてはならないふたつであると感じています。少女が…

清原啓子 没後30年展/八王子市夢美術館

清原啓子という銅版画家をご存じでしょうか。 生前に銅版画を三十枚のこして三十一歳で夭折した彼女の作品に緻密に彫られた物語性は、いまでも人々を磁力のように惹きつけてやみません。久生十蘭をこよなく愛し、その世界に耽溺して、乱歩やボルヘスの波をお…

祈りの光展/聖なる歌の贈り物 Silent Music

街からイルミネーションが消え、オーナメントが消え、クリスマスソングが消えるとともに、季節はお正月に一直線に疾走してゆきます。その波にのるまえに、ほんのすこしだけ今年のアドベントの季節について綴っておきたいと感じました。そう、今月の十七日にS…

アール・デコ・シリーズ企画展 II /霧とリボン

このたび吉祥寺の菫色の小部屋こと霧とリボンさまのコラボレーション・レーベル設立の意味もこめられた記念すべき企画展の初日に、おともだちと駆けつけました。 その名も《Modern Mauve Flapper/モダン・モーヴ・フラッパー》——略してMMFと菫色の淑女たち…

閉ざされた蜜の部屋――志田良枝さんに宛てて(1)

花が棲む。わたしの心臓に植えつけられた種子は幻想の芽を宿し幻惑の花びらを綻ばせる。その花の蜜に閉じられた黄金の部屋に姿を隠す精霊が、わたしに囁く夢をみる。眠りのむこうから彼女が呼ぶとき、おのれの伏せた目のなかに妖しく美しい花の幻影を視る。—…

黒衣の女へ/Le petit parisien

先月のことになりますが、坂上アキ子さんの個展「黒衣の女へ」を鑑賞しに曳舟のLe petit parisienさんへと足を運んでまいりました。 漆黒を纏う女たちは月みたいにおのれの片側を隠し、どこかに秘密を宿しているように美しく、その画を眺めなつつ心から感じ…

アリスのティーパーティー part.2/点滴堂

点滴堂さんのアリスのティーパーティー。 part.1にひきつづきpart.2の今回は、スコーンとサンドイッチ、そして希望をいっぱいに詰めこんだバスケットのなかみたいに、つくりてのかたたちが《アリス》という観念にこめた美しい幻みたいに儚くしかし強靭な夢…

アール・デコ・シリーズ企画展《ROARING TWENTIES〜ファッション・ プレートの女性たち》/霧とリボン

さる十月の某日、吉祥寺の霧とリボンさんに訪ってまいりました。 ところでこの霧とリボンという菫色の霧の薄絹をまとった場所を友人にお話するとき、わたしはこんなことをいいました。そのことをよく覚えていて、わが言葉ながら忘れられないのでそのことから…

白亜の余白に

「白亜の余白に」という題名を無意識に綴ってしまってから、どういう意味だろうと自分でもすこし困惑している。白、とひとことにいっても誰もが脳裏におなじ「白」を思い浮かべるわけではない。世界の乳が祝福をこぼしているミルクのような陽射しを思い浮か…

聖セシリアの面影/Silent Music

わたくしごとからはじまりますが、日曜日にロザリオをお迎えしました。 わたしはクリスチャンではないのだけれど、祈りのかたちとして以前からそれが手もとにあってほしいと願っていて、けれどももちろんどのようなものでもいいわけではありませんでした。わ…

星の巡礼/Silent Music

金木犀の香りがしました。 夏の光輝のなかで朽ちていったなにかが骨のごとく浮き彫りになる秋の空気のなかに浮遊するように漂うその芳香はなぜだか懐かしさを誘い、実際には存在しない遠い過去を想起させます。遺伝子に組みこまれている郷愁みたいに、その香…

ノスタルヂックブートニア/点滴堂

点滴堂さんにはいま、切ないほどの郷愁に満ちた時間が流れています。いいえ、《時》は流れていない。あの空間にある時計はどれもがみな、誰かが置いてきた「過去」のなかで長針も秒針もとまっている。そこにひろがる記憶の屋根裏部屋で、あなたがあのころに…

オッド博士の美少女図鑑/スパンアートギャラリー

オッド博士とは何者なのでしょう。 かれは白衣を纏い、なにかを制作されているようです。 かれはいつも、美しい少女たちに囲まれて微笑んでいます。 けれども、なぜでしょう。かれのシニカルな唇はやさしげに綻んでいるにもかかわらず、眼鏡の奥のその目は妖…

バレエ詩集vol.1~ラ・シルフィード/霧とリボン

あなたはシルフィードを知っていますか。 それは妖しの精なる者の名前です。人間の男を愛したために、美しい罠みたいな笑い声をたてながら独楽のように回転し、男を自らの領域である森へと誘う。愛のために流星のごとく命を燃やし儚くなった、その妖精の名。…

蝶々とリボンⅡ/点滴堂

少女が長い髪に結わえたリボン。 あれはほんとうは、蝶々なのではないかしら。そんなふうに思ったことがある。 少女、という生き物は自分がまだ何者であるかも知らないうちに摘みとられる花のように儚くて、それゆえに美しく痛ましい。 彼女たちは、まるで硝…

錬金術〜誘惑の作用/スパンアートギャラリー

松島智里さんのコラージュ個展、『錬金術〜誘惑の作用』を拝見しにスパンアートギャラリーへとお邪魔いたしました。 けれども彼女の作品の優美さを言葉でいいあらわすなどとは不遜なことだ。それはただ耳を傾けた者が心で感じていればよい音楽を、その旋律が…

夢の縁取り 叶える彩り/文房堂GalleryCafe

みきぐちさんの描かれる絵をどうしてもこの目で見たくて、神保町の文房堂GalleryCafeでひらかれている個展、『夢の縁取り 叶える彩り』へと訪ったわたしは、どれもそれぞれに素晴らしい花と少女たちの絵のなかを巡りながら、ある一枚の画のまえで立ちどまっ…

銀木犀の刹那の切なさ

わたしの銀木犀の乙女がお慕いし憧れているかたに、妖さんというイラストレーターをされていらっしゃるひとがいます。銀木犀が折に触れてそのかたが紡がれる世界のお話をしてくれ、それがまたとても興味深いので、わたしもついに彼のかたの作品をお迎えして…

クラーナハ展/西洋美術館

ひとつまえの文章でユディットのことを綴ったので、そのついでというわけでもないのですが、ユディットの画家であるクラーナハの去年ひらかれた展覧会のことを、過去に綴った文章ですけれども、ここにおいておきます。 * ドイツ・ルネサンスの巨匠、クラー…

《sleeping》――乙女の眠り

先日訪った草舟あんとす号さんで開催されたyukaneさんの個展、『繭の森・1」でお迎えした絵画がわたしのもとにやってきてくれました。包装をひらくとまるで繭の森からの贈り物のようにちいさなお花が出現して、その花を掌のひらに置きながら、わたしはしば…

命短し恋せよ乙女/弥生美術館

もうかれこれふた月近くまえのことになってしまうのですが、弥生美術館で開催されている「命短し恋せよ乙女」展へ足を運んできたのです。 おそらく心に少女や乙女を心に飼っている者にとって、あの美術館へと訪うのはひどく楽しく美しい時間なのではないでし…

燃える花たちの恋

志田良枝さんのお花と蛇さんをもとめてJCA ART展2017へ訪ってまいりました。 「赤い糸」と名づけられたその絵は、二輪の薔薇が柱に縛りつけられ、火刑に処せられている。いったいなぜ? なんの罪で? それはたぶん、現世の縁によって結ばれた恋だけでは満足…

志田良枝展 「水彩庭園」

記憶の屋根裏部屋からこの展覧会のことを想いだすとき、あれからもう半年ほどの月日が流れていることに驚かされる。四月のある日、吉祥寺のギャラリーイロで開催されていた志田良枝さんの個展、「水彩庭園」におうかがいしたときのことです。 この展覧会のご…

永遠の少女標本(5)――レオノーラ・キャリントン

レオノーラ・キャリントン(Leonora Carrington、1917年4月6日ー2011年5月25日) 英国生まれの画家、彫刻家、小説家。メキシコにて死す。 世界の秘密をさがした少女。 マックス・エルンストに愛された彼女は、かれに《風の花嫁》と呼ばれた。 彼女が上梓した…

永遠の少女標本(4)――レメディス・バロ

レメディオス・バロ(Remedios Varo、1908年12月16日-1963年10月8日) スペイン出身の画家。メキシコにて死す。 この世界から脱出をはかろうとした少女。 自分を縛る何者かを、つねにおそれていた彼女。 その「何者か」とは、時間であり空間であり他者であり…

桑原聖美/ふたりのルクレティア展

桑原聖美さんの個展、ということでどうあっても足を運びたいと思っていた、あらかわ画廊さんにお邪魔してきました。 きよらかにうつくしい、というその名のとおりの画を描かれる方の絵のまえで、わたしは黄金の夢と琥珀の光にまぶされた「聖なる美」に魅入ら…