桜の花びら

桜というと幼少時代から、わたしにとっては「妖しの花」でした。 桜という花は春という季節が吹く霞がかった息のなかに出現する蜃気楼のようなものだとずっと感じていました。それを「幽霊」といいかえてもいい。そう、わたしはずっと桜を春にだけ出没する幽…

エミリーと庭の小道/草舟あんとす号

去る二十三日、植物の本屋さんである草舟あんとす号さんから、お願いしていたご本のご入荷のお知らせがひと足はやいクリスマスの贈り物のように、わたしのもとに届きました。バーバラ・クーニーが挿絵を描いた絵本、『エミリー』——このご本はどうしてもあん…

アノンハットの乙女帽子店/SERAPHIM

キバナコスモスが咲いていた。 宙で曲線を描きながら火花のように散りばめられたその花を、国立の駅の南口からでてすぐの場所に見つけたとき、黄色く色づいたそのちいさな花火がなぜだかわたしたちを待っていてくれていたような気がした。コスモスは秋の桜と…

鬼灯の神秘の骨から

鬼灯を水に浸して腐食させると、葉脈だけが残ってアラベスクのような美しい模様が浮き彫りになります。これは毎年この時期の、わたしの遊びのひとつ。夏の宵を幻想的に揺らしてくれる鬼灯は、その葉脈まで神秘の姿をしている。わたしもそうありたいなんて、…

銀木犀の刹那の切なさ

わたしの銀木犀の乙女がお慕いし憧れているかたに、妖さんというイラストレーターをされていらっしゃるひとがいます。銀木犀が折に触れてそのかたが紡がれる世界のお話をしてくれ、それがまたとても興味深いので、わたしもついに彼のかたの作品をお迎えして…

燃える花たちの恋

志田良枝さんのお花と蛇さんをもとめてJCA ART展2017へ訪ってまいりました。 「赤い糸」と名づけられたその絵は、二輪の薔薇が柱に縛りつけられ、火刑に処せられている。いったいなぜ? なんの罪で? それはたぶん、現世の縁によって結ばれた恋だけでは満足…

志田良枝展 「水彩庭園」

記憶の屋根裏部屋からこの展覧会のことを想いだすとき、あれからもう半年ほどの月日が流れていることに驚かされる。四月のある日、吉祥寺のギャラリーイロで開催されていた志田良枝さんの個展、「水彩庭園」におうかがいしたときのことです。 この展覧会のご…

紫陽花と黄金石の心

わたしはほんの子どものころから、自分のなかにある二面性、というものに気づいていました。 わたしが優しいのに冷たいとか、古風なのに飛んでる子とか、少女めいた感傷を抱き叶わぬ夢を追い求めているかと思えば、ひどく冷静に現実を見据えている、だとかそ…

清らかな毒

《秘密》は乙女を育む甘い毒。わたしはわたしを育む「清らかな毒」をもちたいものだと、つねづね感じています。 わたしの《秘密》が、わたしを苦しめる棘となりわたしを刺しても、それがあの薔薇の詩人を蝕み清めた毒のようであればいいと思う。 愛する薔薇…