秘密

草舟のうたとギター《森と光編》/ホリー・ガーデン

新小平の《塔》とわたしがひとり決めしてお呼びしている場所の、正式な名称は「ホリー・ガーデン」です。植物の本屋さんである草舟あんとす号さん、二羽の小鳥の水盤が入り口でお迎えしてくださるコトリ花店さん、いついただいてもおいしいクッキーとトライ…

Jardin éternel〜永遠の庭〜展/Silent Music

過日、東中野のSilent Musicさまで開催されていた「Jardin éternel〜永遠の庭〜」展に訪いました。さかのぼること去年、「聖セシリアの面影」という展示のときのおり、展示会に足を運ばせていただいていたわたしは、すべてのはじまりのときに、たまたまいあ…

ひかり輝く、やみに昏く

かぐや姫のことは、もういろいろなところでお話しているので、その反復しかできないことを承知しつつ、わたしはどうしてもあの月の姫のことを書かずにはいられない。きっと繰り返し話していることと同様のことなので、もう充分だというかたは読み流してもら…

桜の花びら

桜というと幼少時代から、わたしにとっては「妖しの花」でした。 桜という花は春という季節が吹く霞がかった息のなかに出現する蜃気楼のようなものだとずっと感じていました。それを「幽霊」といいかえてもいい。そう、わたしはずっと桜を春にだけ出没する幽…

魔女見習いのこと

魔女見習いはじめました。 年があけてはじめての月蝕のおこった日、唐突にもっと本格的に占いを学びたい、深く探求したいと思いまして、その好奇心と直感と心のみちびくままにまかせているところです。 その日から起こったいろいろなことを自分自身にまとめ…

優麗(Kに宛てたいつかの手紙の断片から、2)

K、あなたが「ゆうれい」という言葉に幽霊ではなく、優麗という字を当て嵌めて、わたしに宛てたお返事にそう綴ってくださったことを、わたしがどんなに嬉しく思っているか、どういったらあなたにつたわるでしょうか。 優麗。雅やかで品のある美しさをもつも…

わたしのなかの三つの顔

《わたし》という人間を近ごろあたらしく知るにつれ、わたしにはおもに三つの顔があるのだということに気づきました。多面的でない人間など、おそらくこの世には存在しません。そのいくつかの側面は、宝石のように輝いていたり、腐敗した果実のような色や匂…

幽霊(Kに宛てたいつかの手紙の断片から、1)

K、またお手紙をさしあげてしまいます。 突然のようですが、幽霊という存在には死ななければなれないのだと、あなたもやっぱり思いますか? こんな疑問からはじまるこのお便りに目をとおしたとき、きっとあなた以外の人間だったなら、また戯言がはじまった…

霧とリボン——《ミス・モーヴ、リアーヌ・ド・プージィに会いに行く》

女として生まれた者(それは現実の性別というものを超越した《女》です)はみな、目には見えない自分だけの扇をもっているのではないかと、わたしは密かに思っている。その「扇」で口もとを隠すように心を守る。その「扇」だけがわたしのシークレットを知り…

今年最後の儀式

わたしは「儀式」という言葉が好きです。新月の夜の願いごと、紅茶に浮かべたおつきさま。そんなロマンティックなおまじないのようなものも、そして考えてみれば毎日のお化粧だって、ある種の儀式みたいなもの。そんなふうに感じます。このルージュはわたし…

エミリーと庭の小道/草舟あんとす号

去る二十三日、植物の本屋さんである草舟あんとす号さんから、お願いしていたご本のご入荷のお知らせがひと足はやいクリスマスの贈り物のように、わたしのもとに届きました。バーバラ・クーニーが挿絵を描いた絵本、『エミリー』——このご本はどうしてもあん…

星降る夜のクリスマス/点滴堂

点滴堂さんで「星」と名のつく展示のたびに、近ごろではタイムトラベルマドレーヌさんのタイムトラベル郵便が開催されています。 これはまず、自分に幸運をあたえてくれる星座や星雲のおみくじをひき、自分自身にお手紙を書いて点滴堂さんのご店主さんにお渡…

アール・デコ・シリーズ企画展 II /霧とリボン

このたび吉祥寺の菫色の小部屋こと霧とリボンさまのコラボレーション・レーベル設立の意味もこめられた記念すべき企画展の初日に、おともだちと駆けつけました。 その名も《Modern Mauve Flapper/モダン・モーヴ・フラッパー》——略してMMFと菫色の淑女たち…

閉ざされた蜜の部屋――志田良枝さんに宛てて(1)

花が棲む。わたしの心臓に植えつけられた種子は幻想の芽を宿し幻惑の花びらを綻ばせる。その花の蜜に閉じられた黄金の部屋に姿を隠す精霊が、わたしに囁く夢をみる。眠りのむこうから彼女が呼ぶとき、おのれの伏せた目のなかに妖しく美しい花の幻影を視る。—…

十三月の約束

二十歳を過ぎたころから、自分自身のために小説を綴っていました。たとえるならばそれは自己治療的なセラピーの一種で、わたしはわたしを慰め癒すために物語というひとつの夢を築き、そこに耽溺することでこの世界に座標軸をさだめた肉体とわたし自身の名を…

黒衣の女へ/Le petit parisien

先月のことになりますが、坂上アキ子さんの個展「黒衣の女へ」を鑑賞しに曳舟のLe petit parisienさんへと足を運んでまいりました。 漆黒を纏う女たちは月みたいにおのれの片側を隠し、どこかに秘密を宿しているように美しく、その画を眺めなつつ心から感じ…

アリスのティーパーティー part.2/点滴堂

点滴堂さんのアリスのティーパーティー。 part.1にひきつづきpart.2の今回は、スコーンとサンドイッチ、そして希望をいっぱいに詰めこんだバスケットのなかみたいに、つくりてのかたたちが《アリス》という観念にこめた美しい幻みたいに儚くしかし強靭な夢…

聖セシリアの面影/Silent Music

わたくしごとからはじまりますが、日曜日にロザリオをお迎えしました。 わたしはクリスチャンではないのだけれど、祈りのかたちとして以前からそれが手もとにあってほしいと願っていて、けれどももちろんどのようなものでもいいわけではありませんでした。わ…

蝶になることへの祈り

ずっとわたしは悲しかった。少女のままでいられなかったこと、いいえ。少女になれなかった自分が悲しかった。少女でないわたしは、しかし女にならなければいけない。そのことを思うとたまらなくなりました。 この「女になる」ということが、呪いのように恐ろ…

乙女の庭と女の荒野

「愛の庭の乙女、その優美で豊潤で繊細な庭は、あなたと親しみをかわす者にとって心安らぐ場所です。悲しみや苦しみに沈むとき、顔をあげて、これまで築いた美しい庭を見渡してみてください。丁寧に培った植物たち、光の洪水。乙女の愛は、その庭がみせるあ…

淋しさと哀しみの座標軸

* わたしの座標軸は、いつもある日突然ねじれる。そうして愛するひとたちを戸惑わせてしまうから、ほんとうはそんなふうに乱れた姿を見られたくはない。なるべく自分のなかだけに閉じこめて、抑えこんでおきたい。魔物を飼いならすように。でもそれはきっと…

神さまのいない月の朔

ふと今年もすでに十月が巡っているのだという事実に気づきました。神さまのいない月です。去年のいまごろはこの神無月の朔日――新月の晩に、神とおなじようにお空に不在の月へと祈りを捧げるように、わたし自身に願うように眠りに就いたことを覚えています。…

星の巡礼/Silent Music

金木犀の香りがしました。 夏の光輝のなかで朽ちていったなにかが骨のごとく浮き彫りになる秋の空気のなかに浮遊するように漂うその芳香はなぜだか懐かしさを誘い、実際には存在しない遠い過去を想起させます。遺伝子に組みこまれている郷愁みたいに、その香…

ノスタルヂックブートニア/点滴堂

点滴堂さんにはいま、切ないほどの郷愁に満ちた時間が流れています。いいえ、《時》は流れていない。あの空間にある時計はどれもがみな、誰かが置いてきた「過去」のなかで長針も秒針もとまっている。そこにひろがる記憶の屋根裏部屋で、あなたがあのころに…

乙女の散策/Silent Music

東中野の駅からすこし歩いた場所にある曲がり角を右折して坂道をおりたさきに、その入り口はあります。Silent Music——マリアさまのお庭。聖母が微笑みながら見おろす美しい庭をとおり、扉をあけたさきにある空間には、やさしい旋律がひろがっている。それは…

かぐや姫の月のまえに

昨夜は中秋の名月にむけて、おつきさまの手紙を綴っていました。かぐや姫の月の日には大好きなひとたちと月世界でも口に運びながら、ほのかに溶けてゆく甘さのなかであの化粧箱に描かれた兎を月に探してみたいけれど、それもなかなかむつかしいので、せめて…

アノンハットの乙女帽子店/SERAPHIM

キバナコスモスが咲いていた。 宙で曲線を描きながら火花のように散りばめられたその花を、国立の駅の南口からでてすぐの場所に見つけたとき、黄色く色づいたそのちいさな花火がなぜだかわたしたちを待っていてくれていたような気がした。コスモスは秋の桜と…

バレエ詩集vol.1~ラ・シルフィード/霧とリボン

あなたはシルフィードを知っていますか。 それは妖しの精なる者の名前です。人間の男を愛したために、美しい罠みたいな笑い声をたてながら独楽のように回転し、男を自らの領域である森へと誘う。愛のために流星のごとく命を燃やし儚くなった、その妖精の名。…

乙女の散策/安楽

距離に隔てられているがために、容易にお逢いすることの叶わない銀木犀のあの子が新幹線で遊びにきてくれたのをいいことに、あちらにこちらにと引っ張りまわしたわたしにむかって、そのたびに銀木犀はおのれのバイブルとしている大好きな嶽本野ばらさんのお…

乙女の散策/十誡

わたしたちはその光線で白い槍みたいに全身を突き刺す太陽に灼かれながら、都会という砂漠のなかを歩いていた。いくつも立ちならぶビルは、群生した巨大なお墓のようだった。それが誰を弔うものなのかも知らず、わたしたちはエメラルドの水の庭園から不意に…