蝶になることへの祈り

ずっとわたしは悲しかった。少女のままでいられなかったこと、いいえ。少女になれなかった自分が悲しかった。少女でないわたしは、しかし女にならなければいけない。そのことを思うとたまらなくなりました。 この「女になる」ということが、呪いのように恐ろ…

夜の海をおよぐ、貝殻みたいな白い月

白い貝殻みたいなおつきさまが窓辺から見えます。 貝殻という言葉のなかに白く閉じこめられた観念に想いを馳せるとき、わたしはなんだか哀しくて切なくなる。荒れ果てた海辺に散らばった貝殻たちは、永遠などどこにもないという事実を証明するように終わって…

蝶は飛びながら夢をみる

「幽霊になった男の話をしよう。」 内田善美の『星の時計のLiddell』はそんな引力のある言葉からはじまる。 夢に囚われ、夢に愛された男。碧い星みたいな瞳をもった、ヒュー・V・バイダーベック。死を呼吸するような夜毎の眠りに出現しては、かれを誘う屋敷…

夢の縁取り 叶える彩り/文房堂GalleryCafe

みきぐちさんの描かれる絵をどうしてもこの目で見たくて、神保町の文房堂GalleryCafeでひらかれている個展、『夢の縁取り 叶える彩り』へと訪ったわたしは、どれもそれぞれに素晴らしい花と少女たちの絵のなかを巡りながら、ある一枚の画のまえで立ちどまっ…

《sleeping》――乙女の眠り

先日訪った草舟あんとす号さんで開催されたyukaneさんの個展、『繭の森・1」でお迎えした絵画がわたしのもとにやってきてくれました。包装をひらくとまるで繭の森からの贈り物のようにちいさなお花が出現して、その花を掌のひらに置きながら、わたしはしば…

昼も夜も、夢に遊ぶ病

昼も夜もなく昨日も明日もなく、夢に遊ぶ病。蝙蝠の時間が墜ちてくる白昼。銀箔に瞬く真夜中。そこに架空の国がある。自分自身が夢の王たるその王国は、うつつの経験が脳に蓄積され処理し残した記憶からできている。けれどもそれだけではない。 変幻自在、縦…

紫陽花と黄金石の心

わたしはほんの子どものころから、自分のなかにある二面性、というものに気づいていました。 わたしが優しいのに冷たいとか、古風なのに飛んでる子とか、少女めいた感傷を抱き叶わぬ夢を追い求めているかと思えば、ひどく冷静に現実を見据えている、だとかそ…

彼女は月に、還りたかった

たぶん誰も信じてくれないだろうけれど、十代のピラミッドの頂点のころから数年間、わたしには夢のなかだけで会うことのできる男の子がいた。 かれは端整な顔をしたシニカルな少年で、わたしがなにか戯言を口走るたびに、うつくしい唇に皮肉気な微笑を浮かべ…